初期設定2

初期設定2

 


敵キャラ

敵キャラもまた、主人公と同じく「痛み」を抱えながら苦悶し成長し、やがては主人公の難敵となる。

最後の最後は共闘するかもしれない。

 


ガルフォード:元は何の特技もないどんくさい田舎の少年だった。だが彼は揺るぎない正義感だけは持ち合わせていた。

故郷の村や家族を守る為に自ら軍隊に志願し身体検査で4度の不合格の末、補欠枠で数合わせとして歩兵部隊に繰り上げ入隊した。キャンプで訓練を受けるが落ちこぼれであり、体力も技術も無く、かといって頭が良いかと言われれば、テストの成績は多めに見ても、中の中の上くらいの成績であった。

 


彼は努力を重ねればいずれは報われるだろうと信じていたが、遂には前線で生死の岐路に立たされる事になる。第一陣の突撃命令で真っ先に被弾した。

不幸中の幸いか、彼は死ななかった。奇跡的に一命を取り止め、故郷に送致された。

四肢を欠くことはなかったものの、脳へのダメージが深刻であり、体を自由に動かすことができなくなった。生まれつき丈夫ではなかったので、このまま数年から十数年、身の回りの世話を受けながら死を待つのみとなった。

 


彼は家族を守る為に勇んで軍へ入ったが、逆に自分が何から何まで世話を受けなければならないような存在になってしまった事に対して悔やんでも悔みきれなかった。このまま自分が誰の役にも立てないどころか、周りにとっての「お荷物」となって生き長らえていくことが許せなかった。

 


長男である彼の意思を受け継いだ次男と三男は、ガルフォードが帰郷し2年後、無事入隊した。次男もまた、十分な栄養を蓄えていた訳ではなく、長男ほどでは無かったが、丈夫ではなかった。しかし三男はまるで長男と次男が本来得るはずだった養分を全て吸収していたかの如く、身体は丈夫で手先も器用であったし、入隊後、銃の扱いに秀でるようになった。兄弟は末の弟の為によく食わしていた。

ある日の突撃で次男は散った。長男の如く助かる事はなく呆気なく命を落としていった。

 


ガルフォードは絶望した。今や自分にできる事は何もなく、老いた親に世話を焼かせ、父は肝を酷く患い、自分同様に命の灯火は消えかかっている。

3男もいずれ我々の如く呆気なく命を落としてゆくのだろうか。

終わりなき戦争の時代に生まれ落ちた我々の、人生の目的とは、人生の価値とは一体何なのだろうか。

目の前に広がる戦火は実は平和であって「平和」というものは架空のものなのだろうか。戦争は永遠に消え去る事はなく人々は永遠に争い続けるのだろうか。

確かにそうだ。いくら我々の家族の如くどんなに円満に見えても自分だってもっと食べたかったし、才能を持つ弟を誇ると同時に羨ましい気持ちにもなった。その思いを外の世界に表現するか否かの違いであって自分もまた争いの火種を知らぬ間に持っていたのかもしれない。

 


戦争、争いによって失うものは命だけではない。最初から戦争を終わらせるという事を放棄していたのならば自分たちは今よりも幸せな暮らしをしていたに違いない。少なくとも5人でまた小さな机を囲んで笑い合えていたのだ。

 


今や自分は体さえも動かす事はできなくなった。できる事といえば、ただ思惟し、この世の行く末を茫然と眺めるだけである。

こんな自分に何の価値があろうか。

できる事なら自分や自分たちを不幸に陥れた全ての悪に復讐をしたいと思った。それさえも叶わないのなら自分は今すぐ遠くへ行って死するのがせめてもの家族への配慮というものだ。しかし自分で歩く事も、ナイフ1本さえも振るうことができない自分はこの恨みをどこにぶつければ良いのだろうか。

 


そんなことを思惟し続けていたら父は先に逝った。自分も今日死んでもおかしくない。そんな月日が過ぎていた。

ある日三男は帰郷し、目覚ましい戦果を挙げたのか、勲章を誇らしげに身につけていた。かつての自分も軍隊で活躍してあのように幾つもの勲章を胸に飾ることを夢見てきたが、今となっては昔の話である。

 


三男は自分に対して憐憫の眼差しを向けている。もう良いんだ。もう自分がこの世でやり残した事は無い。お前はせめて生き残り、結婚し、老いた母を養って、余生を家族で共に過ごすんだ。

人間の性。争いは無くならないのだから。こうして一見仲睦まじい家族の間でさえも争いの火種は起こっているのだから赤の他人同士ではいうまでも無い。

この戦争を終わらせる事は誰にもできないんだ。だったらせめて三男よ。お前の命をどうか無駄にする事なく皆の分まで生き延びてくれ。

 

 

 

三男は軍で特別に魅入られ、とある「遠い地から来訪してきた存在」とやらに接触していたという。それは信じがたい事だが、地球人では無いという。彼らは何とどんな傷をも完全に元どおりに治し、生まれつき持っていたはずの力以上の、人知を超えた力に目覚める方法を知っているという。

そんなことが信じられるであろうか。

弟はこの自分の有り様を既に知っており、治す手立てを発見したつもりなのである。だが自分はもう生を終え、やりどころの無い恨みと共にこの世から消え行くのだ。もう、自分には構わないでくれ。

 


ところが三男は既にその宇宙人をこの地に連れてきていたという。その女は一見して地球人と同じであるが、彼女が本当にそのような魔法を行使することができるのであろうか。

彼女は優しい口調でいて、この戦争を終わらせることができると言っていた。

そんなことができるなら、なぜ今までこの戦争は終わらなかったのだ。彼女の言葉は虚構に違いない。

彼女は青白い光と煙のようなものを発する物質を自分に近づけた。すると、自分の体から光が発せられ、目の前で彼女の物質と融合しーーー

「これで終わり」だという。自分は体を動かすことができるようになっていた。なんでも、魂が宇宙のエネルギーと融合したということだが、全く理解できない。

比類ない基礎能力や、精神的エネルギーを持つ者の魂に呼応してこの現象は起こるという。自分のどこにそんなエネルギーがあったというのだろうか。自分はただ、自分たちを不幸に貶めた存在を地獄に突き落としたいという意思しか持ち合わせていないのだ。

 


得る能力は、宿主の思想を色濃く反映させるらしいが、自分の能力はいったい何なのだろうか。

母に別れの抱擁をし、弟とこの女と共に、この戦争を終わらせる事にした。まずは次男を殺した敵を殲滅してやらねばなるまい。